北海の霧を切り裂き、一本のロングシップが姿を現した。
船の舳先はドラゴン。漕ぐのは屈強な戦士たち。そしてその中央、金髪を風に靡かせて立つ男がいた。
ラグナル・ロズブローク。
実在かどうかは議論があるが、ヴァイキング史においては伝説級のヒーローだ。
彼は今日も元気いっぱいだった。
「おーい! イングランドの皆さーん!」
「こんにちはー略奪に来ましたー!!」
漁村の民は膝から崩れ落ちた。
「なんでそんな爽やかなんだ……?」
■ルーン文字=北欧SNSの管理者たち
上陸したヴァイキングの一団を仕切っているのはラグナルの息子、
“異教徒王”イーヴァル(アイヴァー) と
“骨皮王”ビョルン だ。
イーヴァルは地面に刀を突き立てながら言った。
「まずは村の情報を共有だ。ビョルン、あの家に“攻略済み”って刻んどけ」
「どのフォントで?」
「ドラゴン体で」
「了解!」
こうして木の扉に刻まれたルーン文字は、のちの研究者を悩ませることになる。
村人たちはぽかんとしながら見つめるしかなかった。
「あいつら……自分たちの略奪履歴を共有してる……?」
■イングランド王、ガチで泣く
ちょうどその頃、イングランドの**アルフレッド大王(アルフレッド1世)**は城で震えていた。
側近:「陛下、またヴァイキングが北から……」
アルフレッド:「どこの部族だ?」
側近:「ラグナルの息子たちです」
アルフレッド:「あいつらまた来たのかーー!!」
アルフレッドは文書を広げた。
“ヴァイキング対策費”がまた膨れ上がっている。
「頼むから今年は帰ってくれ……」
誰もがそう願った。
■略奪だけじゃない“謎のサービス精神”
だがヴァイキングの脅威は、単に強いだけではなかった。
めちゃくちゃコミュ力が高いのだ。
アイヴァーは略奪した村の鍛冶屋に言う。
「お前、鉄を打つの得意か?」
「はい……祖父の代から」
「よし、こんな安い炉じゃだめだ。俺たちが改築してやる。強靭な鉄が作れるぞ!」
結果。
村の鍛冶場は以前より数倍強化され、村人はなぜか感謝する事態に。
「いや、略奪されたのに……設備よくなってる……」
「どういう侵略者なんだあいつら……」
⸻
■交易を始め、地元民と普通に仲良くなる
ビョルンは周囲の村人に微笑みかける。
「銀と毛皮、交換しない? うちはくじら肉もあるよ!」
「それ略奪して持ってきたんじゃ……?」
「ふふっ、経路は気にしないで!」
しまいには、村の子供たちとレスリング大会まで始まる始末だ。
「ビョルン強いー!!」
「お前ら将来ヴァイキングになれそうだぞ!」
村の大人たちはもう泣き笑いである。
■アルフレッド大王、胃を壊す
ついにアルフレッド王は決意した。
「講和しよう……もうやだ……」
歴史的な“ウェドモアの和約”の裏で、アルフレッドは心の底から疲れていたのかもしれない。
一方、ヴァイキング側はというと――
ビョルン「今年もイングランド楽しかったな!」
アイヴァー「来年はフランス攻めようぜ!」
ラグナル「パリは食べ物がうまいらしいぞ!」
船員たち「オーーー!!」
どこの旅行サークルだ。
■そして彼らは世界へ旅立つ
ロングシップは再び北海へ消えていく。
「次はパリに“こんにちはー略奪に来ましたー!”するぞ!」
「刻印するルーン文字のデザインも新作考えないとな!」
「海風が気持ちいいなー!」
彼らは征服者であり、商人であり、建築家であり、そして――

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