ヨーロッパ、平和になるまで長すぎた件』小説シーン4:ヴァイキング、略奪しつつ意外とコミュ力高い

雑記

 北海の霧を切り裂き、一本のロングシップが姿を現した。

 船の舳先はドラゴン。漕ぐのは屈強な戦士たち。そしてその中央、金髪を風に靡かせて立つ男がいた。

 ラグナル・ロズブローク。

 実在かどうかは議論があるが、ヴァイキング史においては伝説級のヒーローだ。

 彼は今日も元気いっぱいだった。

 「おーい! イングランドの皆さーん!」

 「こんにちはー略奪に来ましたー!!」

 漁村の民は膝から崩れ落ちた。

 「なんでそんな爽やかなんだ……?」

■ルーン文字=北欧SNSの管理者たち

 上陸したヴァイキングの一団を仕切っているのはラグナルの息子、

 “異教徒王”イーヴァル(アイヴァー)

 “骨皮王”ビョルン だ。

 イーヴァルは地面に刀を突き立てながら言った。

 「まずは村の情報を共有だ。ビョルン、あの家に“攻略済み”って刻んどけ」

 「どのフォントで?」

 「ドラゴン体で」

 「了解!」

 こうして木の扉に刻まれたルーン文字は、のちの研究者を悩ませることになる。

 村人たちはぽかんとしながら見つめるしかなかった。

 「あいつら……自分たちの略奪履歴を共有してる……?」

■イングランド王、ガチで泣く

 ちょうどその頃、イングランドの**アルフレッド大王(アルフレッド1世)**は城で震えていた。

 側近:「陛下、またヴァイキングが北から……」

 アルフレッド:「どこの部族だ?」

 側近:「ラグナルの息子たちです」

 アルフレッド:「あいつらまた来たのかーー!!」

 アルフレッドは文書を広げた。

 “ヴァイキング対策費”がまた膨れ上がっている。

 「頼むから今年は帰ってくれ……」

 誰もがそう願った。

■略奪だけじゃない“謎のサービス精神”

 だがヴァイキングの脅威は、単に強いだけではなかった。

 めちゃくちゃコミュ力が高いのだ。

 アイヴァーは略奪した村の鍛冶屋に言う。

 「お前、鉄を打つの得意か?」

 「はい……祖父の代から」

 「よし、こんな安い炉じゃだめだ。俺たちが改築してやる。強靭な鉄が作れるぞ!」

 結果。

 村の鍛冶場は以前より数倍強化され、村人はなぜか感謝する事態に。

 「いや、略奪されたのに……設備よくなってる……」

 「どういう侵略者なんだあいつら……」

■交易を始め、地元民と普通に仲良くなる

 ビョルンは周囲の村人に微笑みかける。

 「銀と毛皮、交換しない? うちはくじら肉もあるよ!」

 「それ略奪して持ってきたんじゃ……?」

 「ふふっ、経路は気にしないで!」

 しまいには、村の子供たちとレスリング大会まで始まる始末だ。

 「ビョルン強いー!!」

 「お前ら将来ヴァイキングになれそうだぞ!」

 村の大人たちはもう泣き笑いである。

■アルフレッド大王、胃を壊す

 ついにアルフレッド王は決意した。

 「講和しよう……もうやだ……」

 歴史的な“ウェドモアの和約”の裏で、アルフレッドは心の底から疲れていたのかもしれない。

 一方、ヴァイキング側はというと――

 ビョルン「今年もイングランド楽しかったな!」

 アイヴァー「来年はフランス攻めようぜ!」

 ラグナル「パリは食べ物がうまいらしいぞ!」

 船員たち「オーーー!!」

 どこの旅行サークルだ。

■そして彼らは世界へ旅立つ

 ロングシップは再び北海へ消えていく。

 「次はパリに“こんにちはー略奪に来ましたー!”するぞ!」

 「刻印するルーン文字のデザインも新作考えないとな!」

 「海風が気持ちいいなー!」

 彼らは征服者であり、商人であり、建築家であり、そして――

 次はこちら小説シーン5:十字軍、宗教ガチ勢の海外遠征

シーン別シナリオ集はこちら

コメント

タイトルとURLをコピーしました