1490年代 フィレンツェ:突然、街が知的にざわつく
15世紀末、フィレンツェは妙な熱気に包まれていた。
革の匂い、絵具の匂い、本のインクの匂いが混ざり合い、街角には本を抱えた若者がやたら増えている。
「聞いたか? レオナルド(1452–1519)がまた変なメモ書いてたぞ」
「昨日なんて“空を飛べる装置”描いてたし、マジで鳥になり始めてる」
変人扱いされながらも、レオナルド・ダ・ヴィンチは1490年前後、ミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァの下で芸術と科学を同時進行で爆進中。
どこかの誰かは言った——
「ルネサンスって、多分あいつから始まってる」
◆1508–1512年 ローマ:ミケランジェロ、天井と戦う
一方ローマでは、ミケランジェロ(1475–1564)が1508年から天井画に挑んでいた。
「ああもう! 首いてぇ!」
と叫びながらも、システィーナ礼拝堂の天井に『天地創造』を描き続ける。
教皇ユリウス2世(在位1503–1513)は“褒めるより怖い”タイプで、ミケランジェロは命懸けで芸術を生み出した。
完成は1512年。
観光客が見上げて「すげぇ…」と言うたびに、ミケランジェロは天国で首をさすっているに違いない。
◆ヨーロッパ全体:人文主義がまるでSNSのように拡散
15世紀後半〜16世紀初頭、印刷技術(グーテンベルクの発明は1450年代)が普及し、知識は爆発的に拡散された。
「お前、プラトン派?」
「昨日はアリストテレス派だったけど気分で変えた」
――こんな“哲学マッチングアプリ”みたいな会話すら街中にあふれる。
人文主義者のエラスムス(1466–1536)がヨーロッパを旅しながら知性の種まきをしたのも1500年頃。
その著作は印刷機で量産され、まさに“フォロワー爆増中”。
◆でも戦争は普通に続く(1480〜1520年代)
インテリムードの影で、ちゃんと荒れていたのがこの時代のリアル。
•1494年:シャルル8世がイタリアに侵攻(イタリア戦争開始)
ルネサンス真っ最中の街が、突然“舞台から戦場”へ変わる。
•メディチ家の政争(1490〜1510年代)
芸術を支援しつつ、裏ではガチ政治バトル。
•神聖ローマ帝国やフランスの勢力争い
「知性がかっけぇ!」と言いながら、同時に「領土も欲しい!」が止まらない。
酒場の片隅では、ある人文主義者が嘆く。
「人間、芸術好きなのに戦も好きとか……複雑だわ」
◆1510〜1530年代:北ヨーロッパにも知の火が広がる
•アルブレヒト・デューラー(1471–1528)
数学ガチ勢の版画家。1510年代、遠近法と比例を極めて“芸術×数学”の最強コンボを実現。
•ヘンリー8世(1491–1547)
若い頃は音楽と学問が大好きで、1520年頃までは「イングランドのインテリ王」と言われていた(その後いろいろ暴走するが…)。
•北方ルネサンスの盛り上がり
1510〜1530年代、フランス、ドイツ、イングランドにも“知的ブーム”が波のように押し寄せる。
◆そして、時代は動く
芸術が花開き、科学が芽を出し、哲学が復活した15〜16世紀。
だが戦争は完全には止まらず、政治はややこしく絡み続ける。
それでもフィレンツェの誰かが、1515年の夜空を見上げながらつぶやいた。
「知識を求める人が増えるってさ……なんか未来に近づいてる気がしない?」
ルネサンスは、人類が“インテリでいたい”と思った最初の大きな潮流だったのかもしれない。

コメント