――「聖地を取り戻す!」のはずが、気づけば多目的フェス開催
西暦1095年、フランスのクレルモン。
教皇 ウルバヌス2世 が壇上に立ち、ヨーロッパ全土に響く言葉を放った。
「諸君! 聖地エルサレムを取り戻すのだ!」
その瞬間、群衆がどよめいた。
騎士も農民も町娘も、みんな“イベント開始”の空気を感じた。
「おい、遠征だってよ」
「え、どこ行くの?」
「エルサレム。めっちゃ遠いらしい」
「まじか、途中でどれくらい宿あるんだろ……」
まるで日本からヨーロッパへ修学旅行に行くみたいなノリで、
大陸規模の大移動が始まってしまった。
◆第一次十字軍、ガチ勢で大渋滞
1096年。
フランスの諸侯や聖職者たちが、次々と参戦を表明した。
・ロレーヌ公 ゴッドフリー・ド・ブイヨン(真面目すぎる信仰ガチ勢)
・弟の ボードゥアン(やや野心家で領地を見ると目が光る)
・南仏の レーモン4世(プライド高めのベテラン)
彼らが隊列を作ると、道が詰まって進まない。
「おいゴッドフリー!荷物重すぎて進まんぞ!」
「信仰の旅だから装備は万全にしなければ」
「いや重いって!信仰どんだけ詰め込んだんだよ!」
馬も文句を言いたそうにしていた。
◆いや、目的は“聖地”だったよね?
旅は想像の5倍遠く、気温の8倍厳しかった。
アナトリアに入る頃には、兵士たちがザワつき始める。
「なあ…俺たち何のために戦ってるんだっけ」
「聖地奪還じゃないのか?」
「いやボードゥアン殿、途中でエデッサの領主に呼ばれて領地もらったよね?」
「……うむ、領地は大事だ」
「宗教?政治?商売?どれ?」
目的がどんどん増殖し、
十字軍は完全に“やること増えすぎて収拾つかないRPG”と化す。
◆そしてエルサレム奪回(1099)
紆余曲折を経て、ついにゴッドフリーたちはエルサレムに到着。
「これが……聖地!」
涙ぐむ兵士たち。
が、別の者は呟く。
「長すぎた……遠征だけでほぼ人生終わったわ……」
奪回には成功したが、
その後の統治は地獄のように大変だった。
ゴッドフリー「じゃあ私は“王”じゃなく“聖墳墓守護者”で……」
周囲「(いやそれ実質王じゃん)」
◆第二〜第三十くらいまで続く迷走
十字軍の噂はヨーロッパ中に広まり、
「俺も行く!」というノリで続々と他の遠征隊が生まれた。
しかし時代が進むほど、
宗教:3割
プライド:3割
経済:2割
領土:1.8割
その他:よくわからない気合い:0.2割
みたいな割合になり、
もはや何をしに行ってるのかよく分からなくなっていく。
◆そして決定的なシーン:リチャード1世 vs サラディン
第3回十字軍(1189)。
イングランド王 リチャード1世(獅子心王) は、
「俺がやる!」とばかりに豪快に出陣。
一方、対するイスラム側は
名将 サラディン が圧倒的な統率力で迎え撃つ。
リチャード「いざ勝負!」
サラディン「まずは落ち着いて。外交しよう」
リチャード「え、急に大人!?」
サラディン「無意味な戦いはしたくないのだよ」
周囲「(サラディン紳士すぎん?)」
二人の関係は不思議な敬意で満ち、
まるでライバル関係のスポーツ漫画のようだった。
◆結局、十字軍とは何だったのか
ある騎士が呟いた。
「俺たちは聖地のために戦ったのか、
信用、経済、領土、名声のために戦ったのか……もう分からん……」
別の兵士が答える。
「たぶん全部じゃね?」
そんな曖昧さのまま、十字軍の歴史は何世紀も続いた。

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