『ヨーロッパ、平和になるまで長すぎた件』シーン3:キリスト教、ほぼヨーロッパの「Wi-Fi」

雑記

ヨーロッパ大陸に“見えない電波”が満ち始めた頃、人々はこうつぶやいた。

「お祈りするだけでつながるって便利よな」

「回線強すぎて、ノルウェーの漁師まで同期してるらしいぞ」

その名も――

“神のWi-Fi(勝手に命名)”

祈れば即ログイン。

認証は十字を切るだけ。

しかも全域無料・山岳地帯でも速度低下なし

だが、このネットワークの真の恐ろしさは「管理者」だった。

アドミン権限はほぼ独占状態。

持っているのは、ローマに座す**教皇グレゴリウス7世(ヒルデブランド)**ただ一人。

◆王たち、アドミンに逆らえず

ある日、神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世は城の作戦室で叫んだ。

「なんでだ!

 オレは皇帝だぞ!

 なのに“祈りネットワーク”のパスワードが変更できないとはどういうことだ!?」

側近は冷静に答える。

「陛下、それは……アドミン権限がすべて教皇庁に紐づけられておりまして」

「紐づけ!? 誰がそんな仕組みにしたんだ!」

「グレゴリウス7世様です。陛下のアカウントには“制限付きユーザー”と……」

「制限付きィィ!?

 皇帝アカウントが制限付き!?」

ハインリヒは壁に頭を打ち付けた。

家臣たちは慌てて止めた。

「陛下!迂闊に暴れると、アカウント停止……いえ“破門”されます!」

「ログイン停止機能ついてんの!?」

「ついてます!最新アップデートで!」

「最新!? いつの間に更新されてるんだ!?」

「サイレントアップデートですので……」

◆教皇、ネットワークの最強管理者

一方ローマ。

教皇グレゴリウス7世は、祈りの声が世界中から“ピコンピコン”届くのを聴きながら、聖職者たちに言った。

「……またハインリヒが勝手に司教を任命しようとしておるな」

「アドミン、どうされますか?」

「よし。“アカウント一時停止”だ」

カチッと指を鳴らす。

その瞬間、遠くドイツの宮廷に“内部通知”が届く。

《あなたの信仰アカウントは停止されました》

ハインリヒ4世、崩れ落ちる。

「ぐっ……!

 ……ぐぬぬ、ログイン……できん……!」

と、そこへ家臣たちが慌てて戻ってきた。

「陛下! アカウントを戻してもらうには、教皇のところまで行って土下座――

 いえ、“雪の中でお祈り”をしなくては……!」

「そんな“二要素認証”みたいな儀式が!?」

「あります!歴史に残るやつです!」

ハインリヒは震えながら叫ぶ。

「……くそっ!

 あいつ……アドミン権限強すぎだろ!」

◆一方、民衆は楽しそう

その頃、市場では農民たちがのんびり話し合っていた。

「最近、祈ると心が暖かくなる“祝福アップデート”来たよな」

「わしなんか、昨日“罪のクリーンアップ”通知来たぞ」

「お前、それ懺悔サボってたやつやないか?」

「でも便利やわ〜。教会、また回線強化したんやろ」

どこかの吟遊詩人は新曲を歌っていた。

♪ローマの鐘が鳴れば 大陸ぜんぶ通知が来る〜

 祈りは電波〜 信仰はWi-Fi〜♪

民衆は満足げだ。

王と教皇がアドミン権限で殴り合っているとは知らず、ただ“つながっている安心感”を楽しんでいた。

こうしてヨーロッパは、

信仰ネットワークのSSID「DOMINUS」

で全土がつながる時代を迎えたのである。

続きはこちら シーン4:ヴァイキング、略奪しつつ意外とコミュ力高い

「ヨーロッパ、平和になるまで長すぎた件」のその他のシーンはこちら

コメント

タイトルとURLをコピーしました